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Bring me to life 0



「だ、誰かーーーーー!!」




 イグニッションする代わりに悲鳴を上げたのは、肘を掴まれた時点で相手の検討はついていたからだ。ああ覚えのある手、覚えのある掴み方覚えのある力のかけ方、と思っているうちに、肘とツナギの腰をがっちりつかまれ、路地に引きずり込まれた。

「イヤーーー助けてーーー!! 殺されるー、犯されるーー!! 
 へ、ヘルスーーー! ヘルスミー!!」

 銀魂ネタをやっていると、後頭部に鈍い衝撃が走った。

「うっせえ」

 目の前を火花が散る。低い声、ためらいのない暴力。後ろからつかまれていた肘を解放されたので勢いよく振り返る。
 暴君を名乗る男がそこにいた。
 190を優に超える、鍛え上げられた長身。日に晒されて色あせた短い金髪、やぶ睨みの目の色は薄い。外国人であるということ以上に、ゆったりと構えてなお隠しきれない剣呑な空気が、周囲との隔たりを作っていた。
 浮いている。古きよき昔を伝える鎌倉の地で、ものっそ浮いている。

「な…ッ」

 何でここに。
 江間の動揺などそ知らぬフリで、男は可笑しそうに笑った。

「…どんどんエマに似てくるな」

 酷薄そうな薄い唇から飛び出したのは、ひどく流暢な日本語だ。思えば久しぶりに聞く低い声。体が勝手に緊張する。

「…おかげさまで…ギャー!」

 じりじりと距離を取ろうとしていた江間は、あっさり片手で引きずり戻された。腕ごとホールドされて締め上げられると、痩せているとはいえ180近い体が軽々と浮いた。

「…ン? 伸びて、痩せてんじゃねェか」
「…こまかッ…変態…!!」
「そろそろ思い知ってきた頃だろ?」
「く、苦し、苦しいって、おっさん!」
「おっさんじゃねぇ、オレはまだ三十前だ」
そう切り返すのはおっさんの証ッ……あ、あ、ギブギブギブまじごめんなさい」

 苦しまぎれに浮いたかかとで脛を狙うと、あっさり避けられ、腰に膝が叩き込まれた。同時に解放され前に転がり、咳き込みながら起き上がる。

「ネロ、」

 名前を呼ばれて、男はわずかに笑った。その気になれば恐ろしく俊敏に動くのに、今そうしている様は、まるで水に沈んだ大樹のように静謐としている。
 男はどこででもネロと呼ばれていた。江間も他の名前を知らない。顔立ちと寡黙な雰囲気は見るからに北イタリア系だが、国籍はアメリカらしい。他国語に堪能で、特に日本を愛している。
 江間の父の生国、そして母の体にも流れる血を育んだ国を。

「…な、何でいンの? 仕事は!」
「もう脳みそが平和ボケしたか。作戦の後は二週間休暇だ」
「こ、ここ日本…ッ!」
「観光がてら、お前に説明しに来てやったんだよ」
「優先順位逆じゃねェの!!」
「…ギャンギャンうるせぇよ」
 
 ネロはうるさそうに小指を耳の穴に突っ込む。
 彼も興さえ乗れば口数の多い男ではあるが、何せ声が恐ろしく低く、抑えた声で話すので浮ついた印象がまるでない。
 二人で喋っていると、上ずりがちな江間の声だけが目立つ。

「…いつこっち着いたの」
「二日前だ」
「あァ!? …その間どこにいたのさ!」
「根津神社で鳥居見て…巣鴨とか、浅草とかな」
(思いっきり下町観光してやがる…)
「あとは秋葉原。ちょっと来ねェうちに、変な格好の女が増えたな」
「さいですか…」



「ところでお前、オレがやったジョジョはちゃんと取ってあるだろうな」
「読んでく気かよ!! 嫌だよ、どっか行って!」
「かわいくねェなーちっさいころはオレの嫁になるとか目ェ輝かして」
「言ってねェ、ぜって言ってねェ!! 勝手に過去捏造すんなーーーー!!」
「とりあえず3部が読みてぇ」
「ホントもう帰って…」




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