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忘れ物の森





(午前11時。携帯で誰かと話しているようだ)








…たとえばの話、

「―――ええっと、どこまで話したっけ? 灼熱の荒野の話はしたっけ」
『…………、』
「…オーケイ、今夜はそこから。この間までの話はちゃんと覚えてる?晴れてシェラタンは無事に門の試練を合格、シュイと一緒に忘れ物の森に迷い込んだけど、くまねこに助けられて忘れ物たちの襲撃から逃れられるんだ。」

…例えばの話、
喪ったら自分の心の半分も一緒に死んじまうぐらいに惚れた相手がいたとする。
相手には伴侶がいるけどお互いは強い絆で結ばれていて、
何より自分にとってじゃその相手が一番で最高で絶対で、
他の奴なんか考えられない。
しかし相手はあっさり死んでしまう。

「森から抜けると、しばらく草原の真ん中を縫うように、細い道が続いていました。夜のはずなのに辺りは奇妙に明るくて、空を見上げると何かが流れていきます。あれはなんだろう、シェラタンは良く見ようと目をこらしました。けれど、見極める前にシュイが後ろを振り返ります。なにか、つけてきてるぜ、シェラタン」

相手が死んだときに、自分の半分も死んだ。
外で何が起ころうともう何も感じない、
影を持つ幽霊のようになって暮らす日々。

「後ろを振り返ると、草原の向こうの向こうに、何かがいるような気がしました。何かと言われても何ともいえない、黒い陽炎のようなそれが二つ、遠くで揺らめいています」

もうどこへもいない相手、でも好きで、ずっと好きで、
二度と報われることのない想いに焦がれて。
そんな自分の近くには、ある子供がいる。
想い人とその伴侶、最高に気に入らない相手との子供。
自分の愛しい相手にちっとも似ていないその子供は、
ただいけすかない、目障りなだけの、けれど野垂れ死にさせるのも躊躇われる、哀れっぽい野良犬と猫、それだけの存在。

「草原を歩いて歩いて、なだらかな丘をいくつか越えても、二つの陽炎はいつも同じだけの距離をあけて着いてきています。二人は知らず知らず足を速めました」

そんなものが、日がたつにつれて
一目、一声と切望してももう敵わない相手にそっくりな声で喋るようになったら。
…どんな気持ちがするだろーねェ?

『―――――ヨシタダ、』
「うん」

…いいんだけど。
頑張って声落として演技してるわけなんだけど、
でもまァ演技しなくったって
この人にとってはオレはヨシタダなんだろうね!

『…ヨ シタ ダ…』

途切れ途切れの呼ぶ声は、そのうち静かになった。
まァここ最近の恒例行事なんだけどね、寝るまでお話!
時差があるからワシントンはまだ夜明け前、
インソムニア一名さま、夢の旅ごあんなーい、ってね!

…ちなみに、デラには日本語通じないんだよね。
なのに日本語で話せ、何でもいいから話してろと彼女は言うわけだ。
つまり必要なのは真実声だけ、笑っちゃうんだぜ!

………。
ちょっと寝よ!


(頭をぽりぽり掻いたあと、ベッドによじのぼった)




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