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亘理と一戦かましました:前編


 ゴーストの巣食う廃墟と化した元ショッピングセンター、アミーゴ横須賀。
 轟音と共に、巨大な陸鮫が倒れて消えた。

「ほい、終了」
「はいよ! おっつかれー!」

 掻き消えたそれを一瞥し、江間は鉄槌を一閃した。
 横に視線をずらせば亘理・計都もまた、愛刀を鞘へと納め、その燃えるような琥珀の瞳を江間へと移したところだった。碧落教室でちょうど行き会い、どこ行くのー、アミーゴ、へーじゃあオレも行く、で連れ立った本日の同行者。
 ――――確かにやりやすい、と思う。
 顔をあわせてから数ヶ月たつが、未だにお互い詳しい素性は知らない。ただ、何となく飲んできた水の種類が近いような感がする。
 相性の良し悪しはさておき、共闘する際にやりやすいのは紛れもない事実。
 そしてどうにも突っかかってしまうのもまた事実。
 理由を探るのならば、それは甘えと紙一重の同属嫌悪に近いのだが、果たして気づくかどうか。

 江間はさっさと目を逸らすと、フロアに出現した残留思念を集めにかかった。揺らめく怨嗟の残留に詠唱銀を放り込む。
 ころりと床に転がったソレを拾い上げ、江間は眉を寄せた。
 鈍く金に光る、小さな筒型の化粧品―――口紅。
 女性の唇を彩るためのそれは、同行者に女性がいれば迷わず送りつけるところだったが、今回はあいにく男二人連れ。

「……どーしよコレ」

 江間の呟きに、隣の残留思念に詠唱銀を放り込んでいた亘理が振り返った。

「好きな女にやれば?」
「化粧品あげる男ってどーよ…?」
「…普通じゃねぇの?」
「………、」

 今更ながらこいつの育ってきた環境が気になる、いやどうでもいいけど、と江間は胡乱な目で色男(※同い年)を見返した。
 ふとあることを思い出してポケットを探る。

「はっ、そういや、オレはちょうど口紅持ってたのでした!」

 能力値合わせに突っ込んできた口紅を取り出す、これで2本。
 無造作に蓋を外し、少し繰り出してみる。
 血を凝固したような真紅のそれ。どうして男の人ってそういう分かりやすい色が好きなのかしらね、と笑ったのは誰だったか。

「塗るのかよ、」
「死んで」

 やる気のない会話を交わしながら、江間は何気なくそれを握り直した。
 感触を確かめるように、軽く振ってみる。

「………、」

 思いつきに楽しくなって跳ね起きた。
 既に詠唱平気を回収し、前を歩き出している亘理に声をかける。

「亘理亘理、ワータリー」

 背中に呼びかけること三回、敏い彼にしては不思議と鈍い反応で振り返った彼に、口紅の一本を放り投げた。
 訝しげな顔をしながらも、受け止めようと亘理が腕を挙げたその時を見計い。


 後ろ足で強くコンクリートを蹴って、一気に間合いに飛び込んだ。



 腰を低く落として懐に飛び込んだ。膝のバネを利用して伸び上がり、内から外へと腕を薙ぐ。
 喉笛を狙った江間の腕を、しかし亘理は後ろ足に重心を移す、ただそれだけの動作で避けた。
瞬きをしない金色の目が、無表情に江間の指先を見やり、そこに握られているものを確認してもう一度江間へと戻る。大人びた口元に微苦笑が浮かんだ。
 鉄槌を振り回す無骨な指先に、今握られているのは先ほどの口紅。

「…足元ふらついてんのかよ?」
「ハ!」

 からかう声音に、江間は笑う。
 握ったそれを軽く放り投げ、受け止めて改めて構えた。

「勝負しねェ? これ、ナイフ代わりー」
「刺しても届かねェだろ、」
 
 例え全部くり出しても、臓器に致命傷を与えるほどの長さにはならない。
 そう言って亘理は笑い、江間は唇を尖らせる。

「斬る限定の判定でいーじゃん。首と顔は致命傷でアウト。左胸もまァ一応アウト」 

 一度振るってみせる。
 風が鋭く鳴る音に、亘理が少し興味を引かれたように瞬いた。
 江間にならい、口紅のフタを外す。

「…手足は内側のみ有効。それ以外は全部かすり傷、か?」
「うん。いーでしょ、遊んでよ」

 考える風情の亘理に言いつのりながら、江間は普段見せない笑い方で笑う。
 亘理といると、バラクーダにいた頃に感覚が戻る。
 だから嫌いだ。

「遊んで、遊んで、遊べー」
「ぷれい、うぃず、みー、けいと」

 オレと遊んでよ、ケートちゃん。
 わざと下手くそな発音で煽ると、亘理は心底可笑しそうに噴き出した。

「…しょうがねぇなあ、エマちゃん」

 す、と右足を下げて自然体に構え、軽く首を傾げて少年は笑う。

「勝ったら何でも言うこと聞く、な」
「―――勝ってから言えよ!」


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